ドラッグリポジショニング(DR)による
医薬品共同研究開発

DRの背景と概要

① 従来型医薬品開発戦略の限界

近年、承認される新薬の数が年々減少しています。この主な原因は、臨床試験で予想外の副作用が発生すること、及びヒトで充分な体内動態が得られないことです。ヒトと動物の違いはやはり大きく、動物で安全で優れた体内動態を示しても、ヒトで同じ結果が得られないことはある程度仕方がないとも考えられます(従来型医薬品開発戦略の限界)。そのため新しい創薬戦略が求められており(創薬戦略のパラダイムシフト)、そのキーワードは、低コストと安全性です。
抗体医薬品などの登場で医薬品の価格は急騰しており、社会問題にもなっています。これまでは、「高くても売れるのが医薬品」と考えられてきましたが、最近では安い医薬品が求められています。この理由は、日本を含む先進国では、これまでのような経済成長が望めないこと、及び高齢化により医療費がかさむので薬剤費を抑えなくてはならないことです。
一方、最近の新薬開発の停滞の一因は、医薬品の承認審査の厳格化、特に安全性に関する要求水準が格段に高くなっていることです。そこで、いかに安全性を担保するかが創薬にとってより重要になっています。

② DRとは

そこで当社では新しい創薬戦略として、ドラッグ・リポジショニング(DR)を推進しています。DRとは、ヒトでの安全性・体内動態が充分に証明されている既承認薬(既に疾患治療薬として承認されている医薬品)の新しい薬理効果を発見し、その薬を別の疾患治療薬として開発(適応拡大)することです。
既承認薬の適応拡大はこれまでも行われていましたが、臨床の現場でたまたま見つかった効果を基にした適応拡大であったり、製薬企業が自社医薬品の適応を類似疾患へ拡大したりするパターンでした。これに対し当社では、網羅的・体系的・科学的なDRを行っています。
具体的には、我が国で市販されている医薬品(既承認薬)だけを集めた既承認薬ライブラリーを独自に構築し、そこから目的の薬理効果(例えば抗癌作用など)を持つものをスクリーニングし、臨床試験でその効果を確認するという戦略です。そこで当社では新しい創薬戦略として、ドラッグ・リポジショニング(DR)を推進しています。

③ DRの科学的背景

DRの科学的背景の一つとして、ある低分子化合物が、細胞内に存在する多くのタンパク質の中のたった一つだけに作用するとは考えにくいこと、即ち既承認薬は複数の生体内分子に作用し複数の薬理効果を持つと考えられることがあります。
例えば、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)はシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害し抗炎症効果を発揮しますが、最近COX以外のNSAIDのターゲット分子が複数同定され、これがNSAIDの抗癌作用などに関与していることが報告されています。
またDR のもう一つの科学的背景に、これまで全く関係がないと思われていた複数の疾患の根本的な原因が実は共通していたことがあります。例えば、癌、アルツハイマー病、糖尿病のいずれにも、慢性炎症が関与しています。即ち、根本的な原因が同じであるならば、それぞれの疾患に対する既承認薬が他の疾患にも有効であることが予想されます。

④ DRのメリット:早く、安く、確実に、安全な医薬品を開発

DRの第一のメリットは、既に臨床で使われている医薬品なので、ヒトでの安全性や体内動態などがよく分かっており、臨床試験で予想外の副作用や体内動態の問題が発見され開発が失敗する可能性が少ない、即ち医薬品開発の成功確率が高いことです。
さらに、既にあるデータ(試験管内での毒性試験、動物での毒性試験やADME試験、第一相臨床試験など)を再利用し、開発にかかる時間とコストを削減できることです。
新薬開発停滞の原因の一つに、動物では有効性を示したのに臨床で効果が得られないことがあります。この原因は動物モデルの限界であり、特に精神的な疾患(うつ病など)や感覚的な疾患(痛みなど)などは、動物モデルでの評価が難しいのです。
このような疾患に関しては、候補医薬品をまず患者さんに投与し(早期探索的臨床研究)、効果が見られた場合のみ本格的な医薬品開発に入ることが出来れば、新薬開発の成功確率を格段に上げることが出来ます。新しい化合物の場合このような戦略はとれませんが、ヒトでの安全性が担保されている既承認薬の場合この戦略が可能であり、これもDRの利点の一つです。
このようにDRは、早く、安く、確実に、安全な医薬品を開発出来る素晴らしい方法であり、当社はその裾野を広げたいと考えこの事業を行っています。

⑤ 世界と我が国におけるDR

残念ながらDRに関して、我が国は欧米に遅れをとっています。例えば米国では、2006年から4年間 DRサミットとしてDRに関する勉強会が毎年開催され、欧米のバイオベンチャーやメガファーマが参加していました。しかしこの学会に日本から発表・参加していたのは我々だけでした。
欧米では、2007年頃からメガファーマが急激にDRへ創薬戦略をシフトしました。欧米でDRがいち早く盛んになったのは、ゲノム創薬などを最初に開始したのも欧米であり、その限界にいち早く気づいたためです。実際欧米ではDRによる成果も次々に産まれています。
一方、我が国ではDRへのシフトが遅れており、我々がいくらアピールしてもこれまで国や製薬企業はDRに興味を示しませんでした。しかし、2010年3月にNHKで「新薬がでない」という特別番組が放送され、その中で我々の研究がこの問題解決の切り札として紹介されたこともあり、我が国でもDRが注目されるようになってきました。
このように我が国でDRへの関心が急速に高まっている中で、DRのリーディングカンパニーである当社は、既承認薬ライブラリーを構築しDRの更なる推進を図っています。

DRによる医薬品共同研究開発事業

① この事業の概略

  • (1)対象とする共同研究先としては、大学などの公的研究機関、及び企業(特に中小企業やベンチャー企業)を考えています。これらの機関と当社で共同研究開発契約を結びます。
  • (2) 当社は無償で既承認薬ライブラリーを提供します。またスクリーニング系の確立、候補薬からの絞り込み、臨床への橋渡しに必要な研究等に関しては、これまでの経験から得たノウハウや材料を提供します。例えば、これまで当社では数十件のスクリーニングを行っていますので、その結果を蓄積したデータベースは大変有用です。
  • (3) 興味深い候補薬が得られた場合は、その特許を当社と共同で出願して頂きます。DRの場合、用途特許、用法・用量特許、製剤特許などを出願することになりますが、これまでDRで数多くの特許を出願している当社の経験とノウハウを活かすことにより、効果的な特許の出願が可能です。
  • (4) 次に、製剤製造、臨床試験プロトコールの作成、PMDA対応など、臨床試験へ向けた準備を共同で行います。DRに関する臨床試験を行った経験を持つ当社が主導的な役割を果たすことが可能です。
  • (5) 臨床試験前に大手製薬企業にライセンスアウトし、それ以降の開発や承認申請を委託することも検討します。一方、自分たちで臨床試験を行う場合は、当社が資金を拠出することも可能です。
  • (6) 当社は医薬品の製造・販売は行いませんので、最終的には大手製薬企業にライセンスアウトします。その際、ロイヤルティーは当社と共同研究開発機関で貢献度に応じて分配します。

② ご提案

当社の既承認薬ライブラリーに似たものは、価格は数百万になりますが他でも市販されています。しかし、当社がこの共同開発で提供出来る最大の武器は、DRに関する経験とノウハウだと思っています。
スクリーニング結果の評価、製剤製造、特許出願、臨床試験への橋渡し、PMDA相談、ライセンスなど、DRに関しては研究以外の部分がボトルネックになることが多いです。そこで、当社の経験とノウハウを活かし、皆様の優れた研究成果を新薬の開発に効率的に繋げることが我々の願いです。

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