当社医薬品の適応拡大に
関する共同研究開発

ドラッグ・リポジショニング(DR)の項目で述べましたように、新規物質による新薬開発が難しくなっている現在では、既に臨床で使われている医薬品の適応拡大がより重要になっています。そこで当社が現在開発しているPC-SODや、既に上市したリポPGE1・リポNSAIDなどの適応拡大にも、我々は積極的に取り組んでいます。特にこれらの医薬品は、いずれも高い安全性を持っており、その作用機構からも多くの疾患に適応可能だと考えています。以下にPC-SOD、リポPGE1、リポNSAIDなど、当社が開発・上市した医薬品に関して説明させていただきますので、これらの適応拡大に関するご提案をお持ちの方は是非ご連絡下さい。

1. PC-SOD

① 開発の経緯

炎症部位などで産生されている活性酸素は、細胞傷害性・組織傷害性が強く、様々な疾患の根本的な原因になっています。特に、呼吸を行う肺では多量の活性酸素が常に産生されており、特発性肺線維症(IPF)、閉塞性肺疾患症候群(COPD)、急性呼吸促拍症候群(ARDS)、喘息など、多くの肺疾患の根本的な原因は活性酸素です。
そこで活性酸素を消去する生体由来タンパク質が医薬品として古くから注目されてきました。これは、生物が活性酸素から自らを守るために元々持っているタンパク質なので、その不足分を補うことは、有効かつ副作用を起こしにくいと考えられるためです。特に、最も傷害性の強い活性酸素であるスーパーオキシドアニオンを消去するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は古くから注目され、多くの大手製薬企業によりその医薬品開発が試みられました。しかしSODの血中安定性、及び組織親和性は低く、臨床試験は全て失敗に終わりました。そこで、SODの血中半減期を延長し、組織親和性を高めるDDS技術の開発が求められていました。
当社は、SODに生体膜成分であるリン脂質を結合させることにより、組織親和性が向上するのではないかと考えました。またSODの低い血中安定性の原因が腎臓からの排泄であることから、リン脂質を結合させ分子量を増加させることにより、腎排泄が抑制され血中滞留性が向上することも期待しました。実際、ヒトSOD二分子に対してリン脂質(ホスファチジルコリン、PC)を四分子結合させさせると(PC-SOD)、SOD活性を維持したまま、血中安定性が80倍、組織親和性が50-100倍上昇することを見出しました(論文1)。タンパク質を修飾するDDS製剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)修飾がよく知られていますが(PEG化インターフェロンなど)、我々はPC化も他のタンパク質に適用可能な重要なDDS技術であると考えています。

② PC-SOD静注製剤の開発

潰瘍性大腸炎(UC)は、活性酸素により組織が傷害され、それにより腸内細菌が組織へ浸潤し、これによりさらに炎症が悪化することによって起こります。そこでSODはUC治療薬として有望です。我々はまずUCの動物モデルでPC-SODと非修飾SODの効果を比較し、非修飾SOD が全く効果を示さない条件で、PC-SODが顕著な腸炎抑制効果を発揮することを見出しました(論文2)。我々は、PC-SOD静注製剤の非臨床試験、第一相臨床試験を行い、高い安全性を確認した後、UC患者を用いた第二相臨床試験(オープン試験)を行いました。その結果、PC-SOD静注製剤により症状が有意に改善することを見出しました(論文3)。
特発性肺線維症(IPF)は肺が徐々に線維化し呼吸が出来なくなる疾患で、診断後5年以内に80%以上の方が亡くなる深刻な疾患です(肺癌より予後が悪いです)。最近の研究からIPFは、活性酸素によって傷害された組織を修復する反応が異常に亢進するために起こることが分かってきました。そこで我々は、PC-SODがIPFにも有効ではないかと考えました。IPF動物モデルでその治療効果を確認した後(論文4,5)、IPF患者を用いたPC-SOD静注製剤の第二相臨床試験(無作為多施設二重盲検試験)を行いました。その結果、プラセボ群に比べPC-SOD 投与群で努力肺活量(FVC)が改善した患者数が多いこと、及びPC-SOD 投与によりSP-AやLDHなどのIPFバイオマーカーが有意に改善することを見出しました(論文6)。

2. リポPGE1、リポNSAID

① 開発の経緯

リピッドマイクロスフェアは、大豆油と卵黄レシチンからなる平均粒子径約200~300nmの脂肪微粒子です。臨床で使われる栄養補給剤は、リピッドマイクロスフェア形状をした脂肪微粒子です。LTTはこれが血管傷害部位や炎症組織に集積しやすいことに注目し、薬物キャリア(DDS)として有用ではないかと考えました。そして、先駆的な研究によりこのことを証明し、さらにリピッドマイクロスフェア製剤(リポ製剤)を世界に先駆けて実用化することに成功しました。
DDSキャリアは内部に封入する医薬品を代えることにより、様々な医薬品に応用することが可能です。LTTが実用化に成功したのは、承認順にリポステロイド、リポPGE1、リポNSAID(非ステロイド性抗炎症薬)です。

② リポPGE1

慢性動脈閉塞症の患者は、社会の高齢化、生活様式の欧米化、糖尿病患者の急増などから増加の一途にあります。しかし、5年生存率は40%と大変低く、特に重症慢性動脈閉塞症患者は一年以内に約半数が死亡してしまいます。
血管拡張、血管新生促進、血小板凝集抑制作用などを持つPGE1は慢性動脈閉塞症治療薬として有効ですが、体内ですぐに不活性化されてしまうため、DDSによる製剤工夫が必要でした。そこでLTTは、PGE1をリピッドマイクロスフェアに封入することにより、体内での不活性化を軽減し、炎症部位に選択的に送達させるDDS製剤、リポPGE1注射製剤(リプル®、パルクス®)の開発・上市に成功しました(論文7)。
リポPGE1は、慢性動脈閉塞症に高い有効性を発揮します。ピーク時売り上げ(日本)で500億円を超したリポPGE1は、医療に大きく貢献しました。

③ リポNSAID

優れた解熱・鎮痛・抗炎症薬として大変よく使用されている非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)ですが、そのほとんどは経口剤や貼付剤で、注射剤はほとんどありません。しかし臨床現場では、速やかに、そして強力に痛みを抑える必要があり、注射剤へのニーズがありました。また、注射剤とすることで、胃腸肝障害の軽減や経口摂取不能な患者への使用が可能になるといった利点もあります。そこでLTTは、フルルビプロフェンのプロドラッグをリピッドマイクロスフェアに封入したリポ製剤である、リポNSAID(ロピオン®)を開発し、その上市に成功しました。現在でも、術後疼痛や各種癌性疼痛によく使われています。本剤は、北京泰徳製薬により、中国でも術後、各種癌の鎮痛を目的に販売されています。

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